3.高級マンションにて

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 駅から徒歩5分余りという素晴らしい立地条件のマンションに大学生の時から住んでいる。  父親の仕事も絡んで裕福といえばそれもそうだが借りは耳を揃えて返すつもりだ。  仲は基本的に悪く反発して見合い話を断っていたという面も無くはない。良い子の仮面を被るのにも飽き飽き。  素顔で話せるのは白兎や初音くらいのものだ。  それに今は隣でロビーの装飾に圧倒されている雪弥が居る。 「すっ――――」  エントランスに入るなり赤絨毯に固まる姿はとてつもなく可愛い。 「っごーい! この場所だけで施設の倍はあるよ!」  雪弥の綻ぶ笑顔にこれから連れて行く自分の部屋のギャップを見せるのが心苦しい……。  元来、綺麗好きな方ではない。  体裁を気にして着る物と髪だけには注意を払っているが私生活はボロボロ。 「本当に汚いから、失望しないで下さいね?」  念に念を押すくらいしないと絶対に引かれてしまう。
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