3.高級マンションにて

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「お邪魔します……って……すごい数だね」  平積みされた本がリビングまでこれでもか、と続いている。  蓮の日課の一つで“本を一日一冊読む”というのがあるのだ。高校時代から続いている週間で実は今日の課題本(と蓮は名付けている)を購入済みだった。 「『ゆで卵の秘密』『美人教師愛との個人授業』『飛べ、アデリーペンギン!』『夜中の診察室へようこそ』『ファーストキスの味』『医師の一日とは』『妖精の存在についての研究論文の評価基準』『壊れゆく日本人~ネット社会が招く世界危機と今こそ向き会え~』…………」  ツッコミたい気持ちも分からなくもないほどのジャンルと題名のオンパレード。  恋愛、ノンフィクション、エッセイ―――蓮には苦手が無い。その日、適当に手に取った物を読むだけの話なのだ。 「これ、全部読んだの?」 「……はい」 「内容……とか覚えてる?」 「まぁ……。これくらいなら普通に」  一度読めば忘れない蓮は読み返したりしないので本は新品も同然。帯までそのまま残っている。  埃さえ叩いてしまえば十分に綺麗だった。
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