3.高級マンションにて

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 雪弥は宝の山でも見るような目で廊下を進む。中には『六法全書』まであり、雪弥の目はそれにくぎづけになっていた。 「欲しければ後であげますよ? さぁ、来て下さい。こっちがリビングです」  細くなりすぎた廊下の先にある扉をくぐるとパラレルワールド。  自分で言うのもなんだが……異世界に来た気分だ。 「汚い………というより物がありすぎる」 「捨てる機会が無くて気が付いたら……」  書斎は別にあるが仕事はたいていリビングにある木製の机で済ましている。因みに食事もその机の上。  食事と言ってもレトルト食品と外食とコンビニ弁当またはカップ麺の仲良しトリオがメインに来るので自炊はしない。料理は出来るがする気力を持ち合わせていないのだ。 「うわっ……。ビールばっかり……」  冷蔵庫にはビールと発泡酒、お茶や果汁100%のジュースなどとにかく飲み物の宝庫。  お酒は好きな方で夜は毎日飲んでいる。 「体に悪そうな生活してるんだ……」 「うっ……。自覚はしてますけど……独り身だったのでお付き合いしている女性が居ないとご覧の通りです……」  この先も雪弥が来なければこの生活はエンドレスで続く予定。  雪弥は少し考えてから進むべき道を見付けたようだった。 「あのね、私、蓮さんが言うほど汚いとは思わない。けど、寝るところが無いのは困る……かな? せめて、要らない物くらいはまとめない?」  一通り見学を終えて雪弥が出した答えは“大掃除”の要請。  とりあえず、寝られる場所の確保を最優先に考える事に決めた。
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