3.高級マンションにて

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 片付けというのは、やはり、向き不向きがあるようで自分には一生出来ないだろう。  女の香水の次くらいにこの行為が面倒臭いと思ってしまう。今考えれば、幼少からそうゆう機会が無かったのだからしょうがない、と言えばしょうがない。  家には掃除してくれる業者、その専門職が常に居た。そればかりでなく、身のまわりを管理するメイドも複数。  食事もコックがおり、何から何まで他人の世話になって育ったせいで大人になった今、一人暮らしではこのあり様だ。  母親が心配して何人か世話係を連れて行け、と言ったが全て断った。  住むところを与えてもらっただけでも十分、自分の男としての大して高くはないプライドは傷付いていたのでこれよりヒビを入れる必要性は無いと判断したのだ。  父親と母親が嫌いな訳ではないので普通にお世話にもなっている。連絡も頻繁に取り合うので時々聞かされる“結婚”や“孫”の単語にうんざりしているのだった。  しかし、仕事が間に入れば話は全くの別物でそこに関して二人に尊敬などを抱く事は死ぬまで―――否、死んでもないだろう……。  彼らの言う“正義”の真意が蓮の頭では理解出来なかった。  分からないから離れて冷静に“部外者”としてその“正義”を見つめたかった。  今はまだ、その途中だ。  
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