3.高級マンションにて

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 見極め切れる自信は無いが―――いつかは……。 「しかし、片付け上手だなぁ……君は」  感傷に浸る事数十分後…………自分の家の間取りをはっきり見ることが叶った。  おそらくは、引越しをして依頼の快挙だ。 「思ったより紙類が多くて、それをまとめたら終わっちゃった」 「そんなんで“終わっちゃった”なら、僕は本気で片付け下手みたいですねぇ……」  傷付いた訳ではない。ただ単に自分には意外な弱点がところにあるのだ、と気付いただけである。  小さい頃から苦手は無いとばかり自負していたので驚きが大きい。  自分は片付けをしないのではなく出来ないのだ。 「ごめんなさい……。そんなつもりじゃ……」  失言だと思ったのか雪弥はしょんぼりとする。  しょんぼりと言うよりはその先に“怯えている”? 「別に良いですよ? 僕は人には向き不向きがあるのだなぁ、と実感しただけで雪弥には感謝してますから。こんなにも部屋が広いなんて不思議です……。あんなに狭い空間が嘘のようだ……」  本気で感嘆の声が漏れた。要らない物が減るだけで心持ちは随分と違う。
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