3.高級マンションにて

9/9
前へ
/393ページ
次へ
「さぁ……て、出掛けましょうか?」  部屋も綺麗になり、仕事は……置いておいたとして、二人で生活するには色々と足りなさすぎる。 「あっ、一緒に住む、で良いですか? 勝手に決めてあれなんですが……」  あまり雪弥の意志を尊重していなかったので先走った自分に恥ずかしくなる。 「住む……」 「そうですか。それなら……服やベッドや……とにかく、必要な物を買いに行きましょうか? さすがに……ここは何もなさすぎですから。後、施設にもお邪魔しないといけません……。日暮れまで3時間弱……か。行けそうですね」  やることは山のようにある。他人同士が一緒に暮らすのは簡単ではないようだ。 「蓮さん……。施設は行かなくても……良い」  か細い声を出した雪弥は見るからに震えていて、部屋は寒くはない。 「嫌なの? 理由を聞かせてくれるかな?」  雪弥はふるふると首だけで「嫌だ」と答えた。 「あそこは……嫌いなの……」  それ以上は口をつぐんだ。余程、嫌なのだろう……。  無理矢理聞くつもりなど毛頭ないので追及は止めることにした。 「分かりました。無理に聞きはしません。……でも、いつかは教えて下さいね?」 「うん……。ありがとう……」 「いえいえ。それでは買い物へ行きましょう」  財布と携帯だけ装備していざ、出陣。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23482人が本棚に入れています
本棚に追加