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「まずは……ベッド」
意気揚々と蓮は家具コーナーへ足を向ける。雪弥も駆け足で蓮へ付いて行った。
本気で自分の為にベッドを選ぶのは……申し訳ない。
「蓮さん、別に普通の布団で……ソファーでも良いんだけど……」
「駄目。僕がソファーで寝ても良いんですけど、長年使っている物を貴女に使わせるのはそれこそ忍びないです」
律儀なところは素敵だが、お金を貢(みつ)がせているようで決まりが悪い。
綺麗な店員が説明を始めてしまえば後には引けなくなってしまう。
「娘さんにでしたら、こちらの二段ベッドはどうでしょうか?」
ああ、娘さん……そう見えましたか。
雪弥はセーラー服の自分が嫌になりそっぽを向く。
でも……“妻”なんて言えば蓮が恥じをかいてしまうだろう。
ぐっ、と悔しさを堪えて店員の言葉を流そうと試みた。
「すみません、彼女は僕の奥さんですし……そんなに子供でもないので、出来れば普通のシングルベッドを見せてもらえますか?」
蓮は弾けたように顔を上げた自分ににっこりしただけ。
言い慣れてなどいない蓮は言い終わった後に耳を赤くしていた。
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