4.ショッピングモールにて

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 雪弥はきょとん、とする横顔に肯定の意を込めて頷いた。  蓮は川の臭いがする背広から小さなケースを取り出して中身の一枚を雪弥に差し出す。察するに名刺。 「水谷株式会社第一開発部……代表……?」 「はい。お菓子やケーキの新商品を開発するのが主な仕事です。本職は化粧瓶などのデザインなんですが……白兎にやり込められて今はそちらの方を……。ウチの会社は基本的に色々な事業に手を出しているので違う部署に飛ばされたりする事はよくあるんです」  いやいや、蓮。聞きたいのはそこではない。 「代表って?」 「代表は代表です。高校で言うところのホームルーム委員みたいな」  判りやすい例えどうもです……。 「あのさ……部下が居る訳だよね?」 「そうですねぇ、多分、50人くらいは……」  なるほど。蓮は平社員ではないらしい。  蓮の中での“普通”と雪弥の中での“普通”には多少の誤差があるのだけは判明した。  そして、もう一つ、蓮が開発部の代表、という事実並に不可解な点がこの名刺には記載されている……。  
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