4.ショッピングモールにて

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「あの……“水谷株式会社”って、もしかして……?」  どう考えても……蓮の苗字と被っている。 「ああ、一応、僕の父親が社長ですから」  あっさり吐かすがそれは別の言い方をするならば…… 「蓮さんって“跡取り息子”……?」 「ははっ、かもしれません。そんな柄ではありませんけどね」  ですから、そうとしか言いません……。そりゃぁ、柄には見えませんけど……。  蓮は苦笑を浮かべて雪弥が絡んでいない方の手で頭を掻いた。  笑った顔を見る限りではもうすぐ30歳には到底見えない。  その若さである程度の実力を持ち、部下を従えているのは父親の血が通っているからだろうか?  嬉しそうに雑貨を見る蓮にそんな事を聞くのは忍びない。  これはどうか、あれはどうか、と妻よりも寧ろ妹へのプレゼントのように品を手に取って見せてきた。  父親も母親も……知らない雪弥にはプレゼントを選んだりしてくれる人も、選んであげられる人も居なかった。  なので、蓮と買い物を並んで出来るのは実は新鮮でわくわくしていた。
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