5.ダブルベッドの中にて

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 また、あの綺麗な横顔で潤んだ瞳で儚く散りってしまいそうな雪弥。  名前の通り、雪のように一時の幻へと変わってしまいそうだった。  また、体が勝手に脳の指令を総無視で動き出す。  雪弥を包む為に―――。 「一緒に寝ましょう? 今夜は……安心して眠って下さい。ずっと……側に居ますから」  雪弥は何も言わずに背中へと回した腕に少しだけ力を込めてくれた。  それだけなのに、また距離が近づいた。  そこに居る事が自分を幸せにしてくれる事を体で雪弥へ伝えた。  自分の温もりで安らいでもらい、そして、嫌な、辛い思い出を忘れさせたい……。  雪弥をお姫様抱っこすると、綿のように軽かった。  中身の無いような軽さ、折れてしまいそうな腕、栗色の髪……、全てが蓮には大切だった。  広いベッドの上に乗せると小さく小さく存在があるのみ。  電気を消す為に一旦その場所を離れようとするとTシャツの裾を雪弥が摘んだ。 「いか……ないで……」  残される悲しみを知っているから引き止める指先を振り払える訳などない。
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