6.施設にて

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「ああ……独りにしてすみませんでした。あまりに気持ち良さそうだったので、もう少ししてから起こすつもりだったんですけど……側に居れば良かったですね」  よしよし、と幼い子供をあやすように蓮は雪弥の頭を軽く叩いた。 「こ、子供じゃないっ」  施設には自分より幼い子ばかりなので“甘える”とかいう行為から大分遠ざかっていた。  素直に寂しさと言えない可愛さを欠く性格が恨めしい。 「十分子供です」  決定的な否定の言葉にムッ、と顔を上げる。しかし、その先には笑顔。 「でも、僕には魅力的な女性ですよ」  マッチの着火の如く赤面する雪弥に数秒遅れを取って蓮は雪弥から顔を反らした。  耳の端まで茹でたような熱を持っている。  言われて照れるのはしょうがないとしても、言って照れるくらいなら言わなければ良いのに……。  
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