1.橋の下にて

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「誰、あんた」  存外口が悪く刺々しい言葉が蓮へ放たれる。警戒心を表わにして少し構えていた。 「あの、怪しい物じゃ……いや、その……」  走って来た動機があまりにも不謹慎なのでどう言えば良いのか分からない。  言い訳も、理由も言えずにオロオロうろたえる蓮の姿に彼女は悪い人で無いのを承知したのか情けない姿に微笑みを浮かべる。 「変な人」  艶やかな唇の動きにそこから漏れる歌声のような言葉。小鳥を連想させた。  蓮の心、此処にあらず。次いでた言葉に自分の耳を疑う。 「あの……っ、好きです! 僕と……―っ結婚して下さい!」  何を言っているのか蓮自身にも分からなかった。  ただ―――彼女の事を手に入れたい、と思ったのだ。  蓮が出会って30秒でプロポーズしたのはそんなたわいもない理由。たわいもないか、どうかは定かでは無いがたったそれだけの話。 「……はぁ」  唐突過ぎる言葉に彼女は目を丸くする。茶色い瞳が僅かに揺れ動く。
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