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「あー……。それであの怪しーい人が雪ねぇの“大切な奴”な訳?」
雅治が指さす先に見える影にびっくりした。
「な、な、んで?!」
「え゛っ……? 雪ねぇ、気付いて無かったのか?! 最初から居たぜ? あいつ」
物陰から半身を覗かせる蓮は事情を知らなければただの不審者である。
雪弥は蓮が振り返った時バッチリ視線を絡めてしまった。
「…………早く出て来たら?」
「ぅ…………はい」
会社へ行ったはずの人は大変申し訳なさそうに自分の前へ歩みを進めた。
「すみません……。どうしても、施設の事が気になって来てしまいました……」
“気になる”のは“興味”の意味なのか?
雪弥は口をつぐむ。
「おにーサン、それは“興味本位”って事?」
黙る自分の声を雅治は睨みを利かせて代弁する。一瞬、蓮が怪訝そうな目をした。
「違う」
「違わない。みんな憐れな子供に同情するんだ。あんた、良い人っぽいもん」
雅治が鎌を掛ける。かつて、自分の身体目当てで近付いたりした男が居たからだ。
雅治は自分を“護ろう”として蓮を睨み続けた。
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