7.定期考察会にて

2/21
前へ
/393ページ
次へ
「す…………っげぇー」  雅治からは感嘆の声しか出て来ない。  普段から自分は普通に働いているのでそんなに感動されるとリアクションに困る。 「水谷株式会社。僕はここで6年間はた」 「蓮っ!」  社会見学中に鼓膜が破れる周波数の声が社内に響いた。 「探したぞ、この馬鹿っ! 時計が読めないのかっ!?」  真っ黒なスーツにキレのあるぱっちり二重、ショートヘアーに真っ赤な唇のよく映えた出で立ちに、加えて鬼の形相は雅治を震え上がらせるのに十分な威力を持っていた。  8センチほどあるハイヒールを鳴らす脚は地響きをも伴っている。 「ご、ごめんなさい……」 「謝るくらいなら遅刻なんかするなっ! あんたが居ないせいでこっちは大迷惑なんだよっ! 代表さんよ? 会社潰れたら責任取ってくれんのかい?」  美人が凄むとヤのつく男を怒らせるより数倍は怖い……。 「本当に反省してます……。礼美(れみ)」 「ったく……。昨日のずる休みに続いて遅刻なんて本気で呆れる。坊主にナンパでもされたのか?」  礼美は腰を屈めてヒッ、と引き気味の雅治を見た。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23483人が本棚に入れています
本棚に追加