7.定期考察会にて

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「にしても、どうゆう心境の変化だ? あんだけ“女に興味ありません”的な素振りを見せてたクセに……」  複雑そうな礼美の表情はなんとも言えない。  嘘をつく理由もない。しかし、本当の事を言うのも憚られた。 「……笑ったりしませんか?」 「時と場合による」 「絶対、馬鹿にしないで下さい。雅治君もですよ? 口にチャックをして下さい」  雅治は「了解」とキュッ、と唇を結ぶ。 「実は……一目惚れなんです。昨日出会って、即効プロポーズして……今日に至ります」  ………………ブハッ、と数秒遅れで礼美が吹き出し笑いをした。 「あっ……はははっ!!」  滅多に声を上げて笑わない礼美の爆笑が社内中に響いて社員が存在を消すようにそろりそろりと歩く。  明らかに壊れた礼美に近付くのは自分くらいのものである。 「一目惚れっ?! あんだけお見合いして、あんだけ経験積んで、あんだけ良い女が居たのに、それを無意味にする選択に出た訳?」 「別に無意味にしたつもりはありません……」  エレベーターの前の世間話はしばらく礼美が自分いびる為の種となった……。
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