7.定期考察会にて

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「だいたい、鉄の塊やら木材やらはカレーの具ではありません……。100℃で水は沸いても鉄は溶けませんから」 「あれは……たまたまじゃがいもが無かったから……」  じゃがいもの代わりに鉄の塊なんて……多分、母親に似たのだろう。  礼美は顔とおおざっぱな性格だけ母親譲り。 「良い所と悪い所を極端に受け継ぎすぎですね……」  蓮は苦笑を浮かべて春風への扉を開けた。 「ようこそ、水谷様。お待ちしておりました」  薄化粧に淡いピンク色の着物を着た真琴が他人行儀で出迎えをしてくれる。 「別に普通で構わないですよ」 「蓮に敬語はいらん」 「少なくとも礼美には年上を敬う精神くらいは持ってほしいですけどね……」  このやり取りに真琴はクスリと笑う。 「相変わらず仲が良いですね? さぁ、入って、入って。用意は出来てますよ」  松竹梅の名前がつけられた部屋の一つはよく蓮達が使う。  真琴はそれを承知しているので迷う事無くその部屋へ自分達を案内した。 「わぁ……」 「お寿司、腕を奮ってご用意致しました」  自信満々に提供する真琴の言葉通りに豪華な寿司が並ぶ。 「やはり、真琴に頼んで正解でしたね」 「それほどでも……。先輩の為ならこれしきの事、どうって事ありません。ゆっくりしていって下さい」  真琴は美しく一礼して部屋を去る。  蓮は半分固まった雅治を席へ誘導して座らせた。
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