8.待ち合わせにて

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「はぁ…………」  今日何回目か分からない溜め息が漏れた。 「……今日の雪弥変」  友人の晴香(はるか)にかなり不審がられる。 「色々ね……」 「何? 大学の事?」  残業ながら進路の事で悩んでる訳では無い。  自分をこんなに憂鬱にさせるのは“恋”だ。  「悩むのは進路の事だけにして下さい。貴女だけ白紙なんですよ?」  担任の梶原にファイルで頭を叩かれた。  この時期に進学先を決めていないのはどうやらクラスで自分だけらしい。 「すみません……」 「謝るくらいなら早く決めて下さいね」  先生もこんな生徒が居たら大変なんだろうなぁ……あくまで他人事。  もうすぐ待ち合わせの時間なのに蓮が現れないのが凄く寂しい……。  「迎えに来る」の言葉は施設育ちの子供にとって一番欲しい物。 「来なかったら……泣いちゃう……」  「えっ?」と晴香や先生が聞き返すも雪弥は憂いを帯びた瞳を校門へ向けて反らさなかった。
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