8.待ち合わせにて

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「あっ……!」  雪弥は窓硝子に張り付いて目を凝らす。視力に衰えは無い。 「来た…………」  大型バイクに跨がりヘルメットを外すのは間違いなく蓮だ。  遠くからでも愛しい人の姿を見間違うはずがない。  彼は約束を違(たが)う事なく時間通りに現れてくれた。 「見ない顔だけど、あれが彼氏?」  春香も一緒になって外を見ていた。 「うんっ! 私、帰るねっ」  彼氏じゃない、それ以上に大切な人。  今日一日に何回も顔を思い浮かべた愛しい人。  約束を裏切らない真面目な優しい人……。  階段を駆け降りる足取りは飛べそうなほどに軽かった。  身も心も今なら羽ばたける気がした。  飛んで、そのまま蓮の胸へと飛び込んで言いたい事がある。  「ありがとう」って声が枯れるほどに伝えたかった。  
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