8.待ち合わせにて

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「蓮さんっ」  名前を呼ぶと蓮はゆっくりと視線を自分へ向けた。 「雪弥……」  近寄る自分に安堵を漏らして名前を口にした。 「来ないかと思った……」  来てくれて嬉しくて嬉しくて、他に言葉が見付からない。  本音を言えば泣いてしまいそうだ……。 「貴女が居るなら、僕は何処までも迎えに行きます」  欲しくて堪らなかった言葉を蓮はもう一度囁いて微笑んだ。  その声と台詞は耳に心地良かった。  沢山の生徒が若々しくバイクに跨がる蓮を振り返った。  スーツにバイクは反則な組み合わせだ。 「さぁ、乗って下さい。約束の場所へ案内しましょう」  蓮はヘルメットを自分の頭の上へ乗せた。 「えっ? 私、後ろに乗るの?」 「もちろんですよ」  早く、と急かす蓮に押されて怖ず怖ずと後ろへ乗り、蓮の腰へ手を回した。  とても体が密着していて騒ぎっ放しの心臓音が蓮の背中から全て聞こえてしまいそうだった。
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