9.日々の苦悩にて

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 その愛らしい後ろ姿は悩殺的で光る珠が効果的に存在していた。  だからと言ってキスさえまだの自分達に甘い雰囲気は有り得ない。  どちらかと言えば手を出せない状況だった。 「今日はもう寝ますか?」  その問いに雪弥はふるふると首を横にやる。 「もうちょっと起きてる。」 「宿題ですか?」  雪弥は真面目な子で日々の勉強を怠ったりはしなかった。  時間の使い方が上手く、物事の合間合間に色んな事を熟していた。 「ううん。蓮さんと一緒に居たいの……。駄目?」  軽く髪を靡かせて上目使いをする雪弥は本当に……か、可愛くて参る。  同じ匂いを漂わせる誘惑に思わず顔を背けた。 「い、良いですけど……眠くなったら寝て下さいね?」  心臓がいっそう破裂してくれたら楽になれる。否、まぁ、そんな事態になったら困るのだが……。  冷静な思考など求める“衝動”の前には美しく散る。  こんなにも忍耐の無い自分の弱さに悲しくなった。
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