10.三者面談にて

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「三者……面談ですか?」  夏休み直前の雪弥が蓮にお願いしたのは三者面談の付き添いだ。  来週にはある三者面談には当然ながら“父親”か“母親”が必死だ。  その代わりを自分にお願いしたい、という事だ。 「でもね、全部平日なの……。忙しいのは分かってるんだけど……」  予定表の印刷された紙を雪弥は申し訳なさそうに差し出した。 「うーん……」  蓮はそれに目を通して険しい顔をした。 「ねぇ……雪弥の担任の先生ってどんな人ですか?」 「えっ、梶原先生? 変わった人だよー。ミステリアスで掴み所が無いけど普通に顔はカッコイイんだよねぇ。因みに担当教科は現代文で授業はめっちゃ分かりやすいの。テストの意地悪さを除けば基本的には良い人」  雪弥の説明が深まるほどに蓮は自分と葛藤した。  もし、“あの男”なら激しく会いたくない。  が、しかし、雪弥の話のイメージと自分の知っている人間像は120%以上噛み合わない。名前の一致も偶然かもしれない。  これは自分の勘違いなのか?  蓮はしばらく自問自答を繰り返しながら印刷された“担任・梶原 空斗”の文字を見ていた。
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