1.橋の下にて

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 蓮は大学を卒業してから6年間普通に働いている。  現在一人暮らしで彼女は居らず気ままな人生を送っているが今年で30歳。身を固めろ――と父親、母親に嘆願されてうんざりしていた。  今はお昼休みだがそれももうすぐ終わる……。  しかし、蓮はなんとなく……仕事に戻る気分では無かった。  セブンスターを指に挟み煌々と照る太陽の下で頭を抱える。煙は自由に空を泳いで行き、自分もそうなりたい、と馬鹿な事を考えてしまった。  いっそう下の川に飛び込んで頭を冷やさなくては、と思ってしまう。案外深い川は少し濁っており、お世辞にも“綺麗”とは言えなかった。  煙草の灰は指にじりじり迫り、今自分の置かれている状態を連想させる。  送られて来た見合い写真が鞄の中で色褪せて来た。綺麗な人だ、と誰もが口を揃えたが蓮にはありふれた顔に見えて仕方ない。  元々、蓮には女性を“美しい”と思ったり“抱きたい”と感じたりする感情が若干ながら欠如していた。付き合うまでには至っても関係をより深く結ぶ行為に発展しないのだ。  何故なら、蓮にその気が無いから。  顔が良くても、仕事が出来ても、優しくても、気が合っても、“包容力”の無い男は好かれないのだ。
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