第1章

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エレベーターを降りた俺達は、リンドバーグを探すためにそのフロアを探し回っていた。 『ここに来い』とは言われたものの、どこにいるのか分からなかったからだ。 ここのフロアは、飲食店の立ち並ぶフロアで、和・洋・中と様々な料理が楽しめる作りになっている。 その中でラウンジと呼べるような場所は、あらかた探したのだがどこにもおらず、たった今2周目を回ったところだ。 たまらず、どこにいるんだよ、と弱音を吐こうとした瞬間に声がかかった。 「おぅ、やっと来たか」 小さくではあるがリンドバーグの声がした。 俺達は慌て声のした方向を向くが、誰もいない。 「今……声がしたよな……」 「あぁしたな、どこからだ?」 念のため俺達は辺りを1周見回してみたが、いない。 「もしかして……英雄クラスになったら姿を消すことができるのか!?」 俺は、冗談めかして言ってみた。 「そんなわ……」 「おい、こっちだ」 アーノルドの言葉を遮るように、再び同じ方向から声が聞こえる。 よくよく言葉の途中で割り込まれる奴だ。 俺達は、声の方向を凝視した。 目の前には、薄暗く照明の焚かれたバーがある。 その扉の向こう側に、やけに体格のいい男が座っているのが見える。 だが、バーの扉には『Closed』の看板が下がっている。 俺達は、互いに顔を合わせた。 「閉店って書いてあるな」 「あぁ」 「でも、あれだよなぁ」 「……行くしかないか」 「だな」 俺達は、その閉店中のバーの扉を開け、中に入った。
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