第1章

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バーの中は外から見えたように薄暗く、カウンターの照明がその部屋の光量大半を占めるようだ。 店内にはピアノと吹き物の生み出す、軽快なジャスミュージックが大人の空間を際立てている。 そのカウンターにその男はいた。 リンドバーグ・ルッケンス、国の危機を救った英雄だ。 すっげぇ緊張する 「遅かったじゃねえか」 リンドバーグは、笑いながら言う。 怒ってるわけではないようだ。 グラスに入ったウィスキーをかき分け、氷がカランと音をたてる。 「す、すみません!」 俺達は、2人揃って頭を下げる。 たとえ不服があろうと、階級が上の者には逆らわない。 それが軍で生きるための鉄則だ。 次に聞こえて来たのは、低い笑い声だった。 「俺は堅苦しいのは苦手なんだよ。ここはブリーフィングルームじゃあねぇんだ、そんなにかしこまらなくてもいい」 その言葉を聞いて、俺達は顔を上げる。 「まぁ、座りな」 俺達は、リンドバーグの左側に座った。アーノルド、次いで俺の順だ。 リンドバーグは俺達が座ると同時にカウンターに肘をつき、俺達の方を見てグラスを顔の前で1度横に揺らし言う。 「いるか?奢るぞ」 「あ、いゃ……遠慮しときます」 「俺も……ちょっと……」 今酒を飲むと、疲れで一気に眠気が襲ってきそうだったから遠慮した。 「なんだ、つまらんな」 そう言うとリンドバーグは、ウィスキーを一気に飲み干してこっちを向いた。
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