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バーの中は外から見えたように薄暗く、カウンターの照明がその部屋の光量大半を占めるようだ。
店内にはピアノと吹き物の生み出す、軽快なジャスミュージックが大人の空間を際立てている。
そのカウンターにその男はいた。
リンドバーグ・ルッケンス、国の危機を救った英雄だ。
すっげぇ緊張する
「遅かったじゃねえか」
リンドバーグは、笑いながら言う。
怒ってるわけではないようだ。
グラスに入ったウィスキーをかき分け、氷がカランと音をたてる。
「す、すみません!」
俺達は、2人揃って頭を下げる。
たとえ不服があろうと、階級が上の者には逆らわない。
それが軍で生きるための鉄則だ。
次に聞こえて来たのは、低い笑い声だった。
「俺は堅苦しいのは苦手なんだよ。ここはブリーフィングルームじゃあねぇんだ、そんなにかしこまらなくてもいい」
その言葉を聞いて、俺達は顔を上げる。
「まぁ、座りな」
俺達は、リンドバーグの左側に座った。アーノルド、次いで俺の順だ。
リンドバーグは俺達が座ると同時にカウンターに肘をつき、俺達の方を見てグラスを顔の前で1度横に揺らし言う。
「いるか?奢るぞ」
「あ、いゃ……遠慮しときます」
「俺も……ちょっと……」
今酒を飲むと、疲れで一気に眠気が襲ってきそうだったから遠慮した。
「なんだ、つまらんな」
そう言うとリンドバーグは、ウィスキーを一気に飲み干してこっちを向いた。
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