序章

3/16
前へ
/160ページ
次へ
「いよっと」 着地と同時に金属のへしゃげる鈍い音が聞こえた。 衝撃を和らげるために全身をバネのように伸縮させ、電車の屋根の上に着地する。 「ふん!」 その背後から、相方の声と共に金属が切り裂かれる音がした。 俺は後ろを確認せずに立ち上がり、強風に煽られながらも目前の光景を目に焼き付ける。 自分の耳についている無線を抑え、恐らくは真下にいるであろう自分の相方に話しかける。 「うっし、遅れんなよ!」 「ふん……それはこっちの台詞だ」 相手の声が、ノイズ混じりに耳に入ってくる。 「んじゃ……レディー……」 「ゴゥ!」 今のを合図に俺と相方は同時に駆け出す。 息の合った完璧なスタートダッシュだ。 俺が一車両飛び越える度に、真下では次の車両の扉が文字通り、金属が悲鳴をあげながら切り開かれている。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加