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「いよっと」
着地と同時に金属のへしゃげる鈍い音が聞こえた。
衝撃を和らげるために全身をバネのように伸縮させ、電車の屋根の上に着地する。
「ふん!」
その背後から、相方の声と共に金属が切り裂かれる音がした。
俺は後ろを確認せずに立ち上がり、強風に煽られながらも目前の光景を目に焼き付ける。
自分の耳についている無線を抑え、恐らくは真下にいるであろう自分の相方に話しかける。
「うっし、遅れんなよ!」
「ふん……それはこっちの台詞だ」
相手の声が、ノイズ混じりに耳に入ってくる。
「んじゃ……レディー……」
「ゴゥ!」
今のを合図に俺と相方は同時に駆け出す。
息の合った完璧なスタートダッシュだ。
俺が一車両飛び越える度に、真下では次の車両の扉が文字通り、金属が悲鳴をあげながら切り開かれている。
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