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あなたは涙を溢す私を、優しく強く抱き寄せた。
温かい腕が微かに震えていた。
あなたの温もりを感じたのは、それが最後。
あなたは願いを口にして、私の元を去った。
「またね」と……。
その願いも虚しく、私の元に届いたのは、あなたが残した遺書。
短い文章が綴られた手紙。
『側にいてくれて、ありがとう。俺のことは忘れて、幸せになって……』
忘れられるはずがない。
忘れたいのに、あなたの記憶が涙を誘う。
涙はいつまで経っても、枯れなかった。
ただ、愛を求めていたあなたがどうして傷付くの?
どうしてあなたは戦場へ行ったの?
私は守られたいんじゃない、側にいてほしかった。
あなたの愛の言葉が……、温かい腕が……、あなただけが……ほしかった。
ここに帰ってきたら、また愛してあげると決めていたのに……。
強がりを捨てて、素直に「愛してる」とあなたに言いたかったのに……。
あなたがくれた愛に、素直に答えてあげたかったのに……。
どうしてあなたは、私の前から消えてしまったの?
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