追憶

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 私は悪魔に、あなたは天使でも悪魔でもない者に生まれ変わった。 あなたは「死」の力を宿していたけど、私は怖くなかった。 再びあなたに巡り逢えて、嬉しかった。 ……だけど、あなたは私を憶えていなかった。 生まれ変わると、前世の記憶がなくなることは知っていた。 ごく僅かの者しか憶えてないと知っていた。 でも……、許せなかったの。 「またね」の言葉を、私を憶えていなかったことが、許せなかったの。 それは、とても醜い感情。 あなたはまた、「愛」を求めていた。 私はそんなあなたを、遠くで見ていた。 ―私は、ここよ― 私の元に帰ってきたら……、また愛してあげるわ。 早く、私を思い出して……。  でも、現実は冷たいのね。 私の願いなんて、叶うことなく、いつも最悪な結果を与えるんだから……。  仲の良いハンスが、あなたが連いて来ていると教えてくれた。 私は思い出してくれたと思って、あなたの前に立った。 あなた……ビーリアルは真紅の瞳で、私を写していた。 私は、その紅い瞳を見て、気付いたの。 彼は私を憶えてない、と。 思い出してもない、と……。 .
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