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そのことが悔しくて、悲しくて……。
「何?」
意地っ張りの私の冷たい声。
沈黙の中、私は祈っていた。
僅かな期待を持っていた。
彼が私を思い出してほしかった。
私の祈りも虚しく……、ビーリアルの爪が、私の翼に深い傷を作る。
―どう……し……て……?―
本当に彼は……私を憶えていなかった。
別人……だった。
人を……、私を……傷付けるなんて……。
私は悲しみと怒りに、身を任せた。
ビーリアル……あなたの心をえぐる残酷な言葉。
あなたが最も傷付く言葉。
愛憎にまみれた、悲しい狂器をあなたに放った……。
「誰にも……神様にも愛されないよ、ずっと」
その言葉を聞いたビーリアルの瞳は……、私が知っているものだった。
初めて出逢った時の、悲しい瞳……。
闇に潰されそうな、弱く儚い瞳……。
もう二度と……、あなたにそんな瞳をさせたくなかったのに……。
あなたは私に背を向け、走り去った。
その日から、いなくなった。
また、私の前からいなくなった……。
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