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シンシアとビーリアルの短い睨み合いを、僕達は黙って見ていました。
突然、ビーリアルの手がシンシアの翼に伸びました。
シンシアは高い悲鳴を上げました。
シンシアの黒い翼には爪痕ができ、そこから紅い血が出ていました。
ビーリアルの瞳のように紅い血が……。
僕達は驚き、シンシアに駆け寄りました。
その時、僕が見たビーリアルの顔に表情がありませんでした。
僕達は知っていました。
神様に相手にしてもらいたくて、彼が悪戯を繰り返していることにを知っていました。
ビーリアルはまるで、淋しさのあまり心を壊してしまったかのように、無表情だったのです。
シンシアの翼は紅く染まっていきました。
うつ向いたシンシアは、ビーリアルを睨みつくながら言い放ちました。
「……あんたなんて、いなくなればいいのよ」
ビーリアルの体は小さく跳ねました。
彼の目は大きく見開きました。
僕達も 耳を疑いました。
それは、あまりにもシンシアに 似合わない、冷たい言葉でした。
そして、次にシンシアが口にした言葉は、優しい彼女に、無縁に近いはずの言葉でした。
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