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「誰にも……神様にも愛されないよ、ずっと」
以前、悪魔が彼女に悪戯をして怪我をさせた時、彼女は怒りませんでした。
逆に、他の人には絶対にしてはいけないと笑顔で注意しました。
その時の彼女は僕の知っているシンシアではありませんでした。
彼女の言葉はあまりにも、冷酷で残酷でした。
それはビーリアルをひどく傷付けました。
ビーリアルは逃げるように、僕達の前から去りました。
最後に見たビーリアルの紅い瞳は、兎のような瞳でした。
淋しさのあまり死んでしまいそうな、弱く儚い兎の瞳でした。
その日から、ビーリアルは空から姿を消しました。
みんな喜んでいたけど、僕は喜べませんでした。
それは、あの哀しみと孤独に満ちた紅い瞳を見たから……。
シンシアも、ビーリアルがいなくなったことに、喜んでいませんでした。
「来世は不幸にされる方かな……」
冷たい言葉を放ったことに対する後悔が彼女を襲いました。
その小さな彼女の懺悔を耳にしたのは……、僕だけでした。
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