追憶

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 また、あなたは私の前から消えるのね……。  私に痛みを残していなくなるのね……。 愛してほしいなら……、私が愛してあげるのに……。 私の元に帰ってきさえすれば、……また愛してあげるのに……。  目の前にあるのは、紅い水溜まり。 それは、彼の瞳と同じ真紅の色。 鉄の匂いが鼻につく……。 遠ざかる意識の中、思い出したのは……、私の前から消えた彼だった。     ****  あなたはずーっと前から愛を探し求めていたよね。 でも、優しいあなたは、いつも「愛」に裏切られてた……。  あなたはいつも、私の名前を読んで私に抱きつく。 あなたの素直で温かい愛情表現。 素直じゃない強気な私は、いつもスルリとあなたの腕から逃げていた。 その度、あなたはとても淋しそうな瞳をしていたよね。 嫌じゃないの、ただ恥ずかしいだけなの。 そっけない態度は、私の中の天邪鬼のせいなの。 気付いていたよね? だから、いつも私の側にいてくれたんでしょ? そんなあなたに、私は甘えていたのかもしれない。 言葉にしなくても、この想いは伝えわっているって、甘えていたの……。 .
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