2人が本棚に入れています
本棚に追加
初めて会った時、あなたは淋しい瞳をしていたよね。
無表情で、焦点の合わない瞳は空を写していた。
私はそんなあなたに目を奪われて、……声を掛けた。
私の瞳に写るあなたが、あまりにも儚く、幻のように見えて……。
存在を確かめるように、声を掛けた。
あなたは一瞬驚き、優しく温かい笑顔を作った。
嬉しそうな笑顔を、私に向けた。
私はその時から……、心をあなたに奪われた。
やがて私達は言葉を交すようになり、会う回数も増えていった。
次第にお互いのことも話すようになったよね。
私があなたに惹かれたように、あなたの心には私がいたんだよね?
だから、あなたの辛い過去を、私に見せてくれたんでしょ?
ずっと虐待を受けて育ったこと、貧困であることへの酷い差別、自殺を考えていたこと……。
あなたはただ、「愛」を求めていただけなのに……、世界は冷たくあなたを突き放した。
あなたの頬を伝う涙は、とても綺麗で汚れがなかった。
馬鹿なあなたは、誰かを恨む術を知らず、傷だけを背負ってばかりで……。
いつかくる「幸せ」を信じていた……。
.
最初のコメントを投稿しよう!