生還

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
一木(いつき)は、もう全てが終ったと思っていた。木船も同じ事を思っていた。二人は会話も無く、ただ夜見島湾に歩いていた。 夜見島湾に着くと船が一隻あった。たぶん、夜見島に来るときに乗っていた船だろうと、一木と木船は一目でわかった。一木はあの時木船の手を、離してしまったことを思いだしてしまった。 「もう、いいんだよ。こうして生きて帰れるんだし。」木船は一木の目をみて、笑顔で言った。 「もう、離さないからな。」一木が真剣な眼差しで答えた。 「さぁ、いこうか❗あたし達だけみたいだけど・・・」寂しそうに言ったその時。 向こうから誰かがこっちに来る。   一木は何も言わず睨んでいた。 「誰か来る。あいつら?」木船も持っている鎌を強くにぎりしめた。 「いや、あいつは・・・」   「また会ったな。」 永井が足を引きずりながらこっちに来ていた。 一木は永井のもとに行き、肩をかした。 「俺達・・・生きて帰れるんだよな・・・」永井が確かめるように言う。 「あぁ。もう、全部終わったんだよ。全部。」 だが、永井は何か引っ掛かる。自分は何故また夜見島に戻れたのか。何が起こったのか。だが、それを一木達に話さなかった。 そのまま、船は夜見島を後にした・・・・
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!