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「冬子さん、可愛い。講義に出るのは、明日にします」
「なぁ、ちょっ……どこ向かっ…――!!」
「愚問だよ。冬子さんが動けない今のうちに」
後悔の渦に呑み込まれて一日を終えたのは、冬子にとって初めてのことだった。
枕元のスタンドだけが、頼りなく部屋を照らす。
「冬子さん、いつまでふてくされてるの」
滑らかな背中を千優に向けたまま、冬子は肩越しに千優を睨みつけた。
「泥酔していたならどれだけマシだったことか……」
本来の自分を思い出して、言い訳できない失態を犯してしまった自分を呪った。
酒の勢いに任せて次の日には綺麗サッパリ忘れてしまえたらと思うが、身体に刻みつけられた感覚は、はい、そうですか、と簡単に消えてはくれない。
中庭のキスを合図に、不意打ちとはいえ文字通り腰砕けにされて、あれよあれよと事は済んでしまった。
「何ぶつくさ言ってるの? 初めてだった訳でもあるまいし……」
「馬鹿者。初めてだったら尚問題だ。もし……」
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