152人が本棚に入れています
本棚に追加
朝方、降り出した雨は昼になっても止む事なく降り続いていた。
その雨脚は弱まる事も強まる事もなく、シトシトと地面を叩いていた。
―――グラス中心街
普段は賑わう通りは閑散としており、聞こえるのは雨音と東門付近からの兵達の喧騒だけだった。
グラスに住む住民達は殆どが避難していた。
この誰も居ないはずの通りの家の中にうごめく男の影が一つあった。
男『ハハハッ!シン様々だなぁ。流石にセイツ第二の都市だ。』
男は両手に大きな袋を持ち中に次々と金になりそうな物を放り込んでいった。
グラスの住民達はシン軍が凄い勢いで攻めてくるとあって家財一式を残したまま避難してしまっていた。
要するに彼は火事場泥棒であった。
男『ふぅ。ここら一帯は盗り終えたな。』
男はそう呟くと、ゆっくりと入口から顔を出し通りを確認した。
通りには兵の姿は無く、静かであった。
男『そろそろ逃げねーとシン軍が襲ってくるな…。』
男は家を出ると通りを歩き出した。
男『チッ。まだ降ってんの『シューーッカンッ!』か…』
男が天に向かい悪態を付いた時だった。
彼が全てを言い終わる前に、彼の頭には一本の矢が刺さっていた。
通りには男の死体が一つ。
そして、グラス山とクロック山から次々と大量の矢がグラスの街に降り注いだ。
最初のコメントを投稿しよう!