グラス近郊の戦い

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カメル以外の兵達も突如現れたシン軍に気付いたらしく皆一様に青い顔になっていた。 自分達の命が風前の灯だと悟ったのか武器を手放し膝を付く者までいた。 更にそんなセイツ軍に追い討ちをかけるように、先程まで逃げていたシン軍もぐるりと軍を返し突き進んで来た。 これにより、セイツ軍は三方から包囲される形となった。 カメルはそれでも兵達に向かい必死に声をかける。 カメル『諦めるな!まだ活路はある!今ならグラス方面は敵がいない!全速力で戻るんだ!』 カメルがそう叫んだときだった。 三方向のシン軍の前方からそれぞれ一人ずつの人物が現れた。 北のシン軍からは派手な甲冑を身に纏い美しく伸びた髪を掻き分けながらトリーンが。 南からは背中を丸めた形で馬に跨がり、長い欝陶しい前髪を風に靡かせながらジャックが。 そして、東のシン軍の先頭には眼帯をつけてウェーブのかかった長髪の男、恰好は一般兵の様だが体格は他の兵達より一回り大きい。 カメルはその男の姿を見て驚いた。
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