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男はクロムに話しかけながら更に近づくと馬を下りた。
『俺はシン王国十二将騎士団のグラビット・サイフォン。…お前の名前を聞かせてくれるか?』
(十二将騎士団だと!?……何故シンのエリート騎士がこんな最前線に…。)
クロムはグラビットの問いかけに言葉を返さず少し怪訝な表情を見せた。
『ん?どうした?まさか名が無い訳ではあるまい?』
雨は容赦なく降り続ける。
クロムは自分の置かれている状況を考え、ここはグラビットの問いに答えることにした。
『クロム…、クロム・ウィンチェスター。』
クロムがグラビットを睨みながら呟くと、驚いたように声をあげた。
『ほう。ウィンチェスター家の者か。エントールの武家として有名な家だ。道理で強い訳だ。』
グラビットは腕組みしながら感心したように頷く。
『だがクロムよ。この状況でむやみに我が軍に突っ込んで命を捨てても何もならんぞ。勇猛と蛮勇は似て非なるものだ。』
諭すような口調のグラビットに苛立ちを隠せなくなったクロムは鼻を鳴らす。
『ふん。ならば貴様と剣を交え刺し違えてやる。』
そう言うとグラビットに剣を向けた。
『それは最も間違った選択だ。クロム・ウィンチェスター…。』
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