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シン軍は連合軍を壊滅させた後、更にセイツ領土への進撃を始めていた。
そのシン軍の後方に二人の将が一般兵に指示を出しつつ馬上で言葉を交わしていた。
グラビット『それにしても何だその格好は?馬がコケでもしたのか?』
グラビットが隣で泥だらけになった男に話し掛ける。
男『いやぁ~…。あちらさんに中々の隊長さんが居てね~。久しぶりに本気を出したよぉ~。』
グラビット『ほぉ~?お前に本気を出させる程の男が居たのか。』
男『まぁね~。馬乗りになられて岩の様な拳を振り下ろされちゃって…。一発ももらわなかったけどね~。生き残った部下を逃がすために必死になって、ありゃ立派な隊長さんだったなぁ。』
グラビット『何?まさか何人か取り逃がしたのか?』
男『いや…。ちゃ~んと追っ手を出したし、始末は付けたよ~。』
グラビット『…そうか。ならば良いが。』
男『…………。』
グラビット『ん?どうかしたか?』
男はグラビットの問いにしばらく考え込み、背中に付いた泥を払いながら呟いた。
男『なぁグラビット…。俺達はこれでいいのかなぁ~?』
グラビット『ん?どういう事だ?』
男『いやね、俺達が戦場に出るって事はウチの王様は本格的に世界を統一しに動き出したって事だろ?』
グラビット『あぁ。今回、私達に出陣命令が下ったという事は…そういう事だろうな。』
男『う~ん。俺は何となく疑問を感じてしまうんだぁ。今のこの世の中に民達は笑えてないよなぁ。十年前のチョーク進攻の時も、今日の連合軍殲滅命令も…。そこまでやる必要あるのかね~。今までだって充分幸せだったのに…ウチの王様はぁ一体何を考え…。』
グラビット『シープラス!!それ以上言うな。』
シープラス『あぁ~…。すまない…。』
グラビット『もう幕は上がったんだ。俺達はシン王のされる事に私情を挟む事は許されない。ただ与えられた仕事をこなしていくしか無いんだ…。今回は同期のよしみで今のお前の言葉は聞かなかった事にしておこう。』
そう言うとグラビットは馬を走らせていった。
シープラス(やれやれ…。真面目な男だねぇ~。)
シープラスは空を見上げ顔を出した太陽の光に手をかざした。
シープラス『へっくしょんっ!!…………ズル。』
シープラス『ほうら風邪ひいちまったぁ。』
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