邂逅

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ベイル『実はわしには息子がおってな。妻は息子を産んですぐに逝ってしまってな…、父子二人で励ましあいながら生きておった。息子は年頃になると軍人になった…。わしも若い頃は軍におったから、しっかりと血を継いでおったようじゃった。わしとしては家業を継いでもらう為に早く修行して欲しかったんじゃがな…。』 ベイルは鼻を掻きながら懐かしむ様に目を細め、遠くを見つめる。 エデンは黙ってベイルの話しを聞き続けた。 ベイル『息子が軍に入って八年が経った頃、あのシンの殺戮事件が起きた。わしは心配で心配で街の人間に状況を逐一聞いておった。それから三日経った朝に、息子が戦死したと軍からの手紙が届いた…。わしは目の前が真っ暗になった。やり場のない悲しみ。怒り。じゃが、やがてシンの猛攻によって街を追われ、流民となり、わしはボロボロじゃった。この場所にようやく腰を落ち着けてもずっと息子の死を受け入れられずにおった。』 ベイルは深く息を吐いた。 ベイル『じゃが、ある日、鏡に映る自分の姿を見て思ったんじゃ。このままでは死んだ息子に向こうで会わす顔が無いとな…。わしはそれから変わった。一生懸命生きる覚悟を決めたんじゃ。嘆く暇があったら前を向け。お主に言った言葉じゃが、この言葉は今までわしがわし自身に言い聞かせて来た言葉でもあるんじゃよ…。』
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