デビュー

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最初に彼女に出会ったのは5年前。それまでキャバクラや飲み屋さんに対して偏見を持っていた義孝は友人の「そんな引きこもってばかりいないでたまには飲みにでも行ったら?良い気分転換になるわよ。」との一言で、(普段女の子との接点もないし・・・。かわいい女の子とおしゃべりしてカラオケでもしたいな~。)と思った。 その友人は女の子で週に1度金曜の夜だけバイトで店に出ていた。 その子が言うには「カワイくて若い子が居て、値段も安いわよ。」との事だった。 何年も彼女のいない義孝は(良い子がいたら友達になりたいな。)と、思った。 何しろその声をかけてくれた友人がかわいい顔で背もちょっと高く胸も大きく色白でお人形さんみたいな子で、この子とも(もっと仲良くなれるかな?) 非常に単純な義孝だった。 義孝はちょっと田舎の中規模程度の工場の跡取り息子だった。年商はだいたい30億ちょっと。代々真面目にやってきたおかげで工場は安泰。近所の評判も悪くない。周りの人はともかく親戚までも「継げる跡があって良いわね~!」と言われて義孝は苦笑いするのが常だった。 しかし義孝家は両親とも非常に堅実で義孝は自分の家が特別裕福と感じた事はなかった。 義孝は小さい頃から体が弱く風邪ばかりひいていた。その為か義孝は甘やかされ小学生の頃は毎日毎日道草ばかりして幼なじみ達と遊んでばかりで勉強の方はおろそかだった。 しかし父としては幼児のころひきつけを起こして救急車のお世話になった我が子、好きに遊んでとにかく丈夫に育ってくれれば、という思惑だったようだ。 運動は小さいころから苦手。小学生の頃はテレビのお笑い番組のマネをして結構みんなを笑わせていたがいたって平凡な児童だった。 中学では卓球部。ここでも明るく振る舞い喋りながら練習していた。しかし、自意識過剰なせいか非常にシャイで小学生の頃から好きな子と同じ部活だったがほとんど話をする事は出来なかった。観ているだけで幸せで、中2の頃クラスメイトが女の子とデートしたと聞いて義孝は本気で驚いていた。彼は義孝と違ってスポーツマンで女の子に人気があった。義孝は話を聞いて想像しただけで顔が赤らむのを感じた。中学生で女の子とデートなど義孝には考えられなかった。それは彼にとってあまりにも恥ずかしかった。 このあたりから義孝は自分に対して何とも言えないコンプレックスを感じるようになっていった。
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