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のどかな田園の広がる裏道。
その道沿いに並ぶ水色のバス。
ここが10ヶ月前まで慶太が通勤していた旅行会社。
ネクタイを結び、
私がプレゼントした安物のビジネスバックで、
たまに私の手作り弁当を提げて勤めていた会社。
事務所の脇に、慶太が営業用に使用していた深いグリーンのマークIIが停まっている。
フェンダーミラーなのですぐに目につく。
だからこそあの日、すれ違った時にすぐわかった…。
酔い潰れて代行で帰った慶太。
私とゆいちゃんに電話していた慶太。
車に乗っていたのに車上荒らしに遭ってしまった慶太…。
そんな事をふと思い出した…。
私はその横を、立ち止まる事なく奥の事務所に足を進めた。
私が来るべき所ではないのかも知れない。
わかってはいるけど 私が最後に出来る事…。
慶太の代わりに、1度は社長さんに頭を下げたい…。
ガラス張りの玄関の扉の向こうで、涼しそうに事務の仕事をこなしている受付の女性が見えた。
顔ぶれは変わっていた…。
その中の1人が私に気付き、席を立った。
私はドア越しに一礼して扉を押した。
中は冷房が効いていた。
「京谷と言いますが…社長さんはいらっしゃいますか?」
「少々お待ち下さい」
と、事務員は内線をかけた。
私は背筋を伸ばし、小さく深呼吸した。
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