7362人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくして、2階の社長室から吉村社長が降りて来た。
背は小柄で、少し小太りな体型。
スーツではなく、ラフな綿の柄シャツを着ていた。
ゆっくりと私の方を向いて歩き、途中で立ち止まり商談用の応接セットに私を促した。
私が1歩1歩近付く間に、社長は長いソファーの真ん中に腰を下ろした。
私がテーブルの横まで歩いて来た時に、吉村社長は私を見上げた。
私はいつもの癖で目をそらして俯いてしまった…。
きちんと謝る態度ではないとわかっていたが、俯いたまま顔を上げる事が出来なかった…。
吉村社長は黙って私の言葉を待っているようだった。
私は何から話していいかわからなかった。
「さっき…。判決が下りました…。」
「そうか…。今日やったんか…。で どうやったんぞ?」
吉村社長はゆっくりと話した。
「1年8ヶ月の実刑です…」
「そか…。」
吉村社長は前屈みになり、開いた足の膝の上にもたれるようにして指を前で組んだ。
私は立ったまま深く頭を下げた。
「今回の事…本当に申し訳ありませんでした……!」
私は魂を搾り出すかのように、静かにでも強く言葉にして、もう1度頭を下げた。
「私が出る幕ではないのはわかっています。
でもどうしても一目お会いしておきたいと思って来ました……!」
俯いた私の前で、吉村社長はため息をついた。
やっぱり気分を損ねてしまったのか…。
私は立って頭を下げたまま、身動きが取れなくなってしまった…。
最初のコメントを投稿しよう!