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昔々、ずーっと昔。
空よりも青く、どこまでも続く海に面した街。
物語は、そこから始まる。
これは、一人の少年と人魚の物語。
海の近くにある小さな街。
貿易が盛んで、人で賑わい、豊かな街でした。
少年は、その街に住んでいました。
住宅地や商店街から離れた浜辺の、小さな小屋に父親と暮らしていました。
しかし、少年はいつも独りでした。
少年が幼い時に母親は病死し、父親は漁師だったので、滅多に家にいませんでした。
父親は、何日も何日も海へ出て、たまに帰ってきても、またすぐに海へ出るのでした。
母親がいた時、少年は父親がいない時は、歌を歌って、寂しさをまぎらわせていました。
少年は歌うことが大スキだったのです。
しかし、母親を亡くした哀しさで少年の声は出なくなりました。
波の音しか聞こえない小屋には、寂しさだけが広がっていました。
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