【手紙】

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   車を取りに行く間、黒川は今日会う人物がどんな男なのかを想像していた。  できることなら、色男でなければ良いと願う。  その理由は単純。  女性社員が半数を占めている為、噂の的になる上、あまり騒がれる程ルックスがいいと、暫くは仕事にならないからである。  そんな好奇の目のある中で働いてもらうのは、さすがに申し訳ないと思った。  仕事の即戦力が入ってくるのは喜ばしいことだが、悩みの種も同時に生まれそうで黒川は今から頭を抱える。  どうかパソコンオタクのブ男でありますように! と切実に願いながら、黒川は車に乗り込んだ。  黒川のそんな願いなど露知らず、予定の時間に待ち合わせた喫茶店に到着した鹿角晴希(カヅノ ハルキ)は、左角にある窓際の席で一服していた。  高校時代の親友と同じ場所へよく行ったと、ふっと顔がほころぶ。  同時に感じた胸の傷みを見ないフリをして、晴希は吸い殻を揉み消した。 「鹿角、晴希…さん?」
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