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――まったく、面倒な事極まりない……。
思誓は青嵐学園のだだっ広い廊下に立ち、自分の足元に視線を落としていた。
2年E組の担任らしい中年の男に、ここで待っていてくれと指示されたのだ。
――こっちは誰かと宜しくする気なんて毛頭無い。
そんな事を考えていたら、教室の中から「入って」と声が掛かったので、扉に手を掛け静かに中へ入った。
自分に集中する視線を気持ち悪い程感じながら、黒板の前、真ん中辺りで足を止める。
本人はやる気など微塵もなく、ただ適当に名前を名乗り「宜しくお願いします」と言い、全身全霊の愛想笑いをむさ苦しい連中に振り撒いただけだった。
そうしたら。
流れる沈黙。
そう広くもない教室に居並ぶ者が全員、黒板の前に立ち作り物の笑みを浮かべる自分を見ている。
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