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周りでヒソヒソと自分の事を囁かれて、さすがに苛つきを覚えてきた思誓だったが、自分から他人と馴れ合おうとはしないのでただ放っておいた。
――そんなに俺が邪魔かよ。
そちらの方を目だけで一瞥する。蔑むような眼差しで。
「やあ。初めまして、浪川思誓くんだっけ?」
いきなり視界に現れたそいつに、思誓の大きな目は更に大きく見開かれる。
「俺、高坂終(こうさか しゅう)。宜しく」
やたらと楽しげに名乗ったそいつは、思誓の目の前で歯を見せるようにニカリと笑った。その子供っぽい笑い方や話し方とは対照的に、背は高く目鼻立ちも大人びている。
「はあ……」
高坂終に早められた鼓動を落ち着けながら、思誓はそう曖昧に返事をした。
「君可愛いね? クラスの皆が言ってるよ? 『転校生めっちゃ可愛い』とか『声掛けてみろよ』とか」
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