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それからは、地獄の休み時間が妖しい笑みを湛え彼を待っていた。
どんな風に地獄だったかといえば……それは思誓の姿を見れば何となく予想はつきそうなものである。
「はあ……」
茶褐色の机に上半身を俯せ、蒼白い頬をし、思誓は魂の抜けたようにそれは大きな溜め息を吐いた。
あの高坂とかいう奴を筆頭に、何十人もの男共に「メアド教えて」だの「友達になって」だのと迫られまくった思誓だった。
お陰で電話帳は昨日までの二~三倍に膨れあがってしまった。恐らくは永遠に連絡を取らないと思われる者達の連絡先で。
さあ。
もうこれ以上は身がもたない。とっとと寮へ戻るとしよう。
上半身を起こし、薄っぺらい鞄を手に椅子から立ち上がる。やっと帰れるというのに、寮までの道のりが酷く長く思えてくる。
思誓は重い足を引きずるようにしながら、2年E組の教室を後にした。
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