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軽く頭を下げながら言った。それで兄ちゃんは満足したらしい。俺は片手でドアを閉めた。
「それで用事って何?」
あまり重要な用じゃなさそうだけれど。重要じゃないどころかどーっでも良いような用だと思う。
「兄ちゃん、俺いま落ち込んでるんだよね」
だからあまり兄ちゃんの我が儘には関わっていたくない。静かにしていたい。さっきのは友人に対しては別。親しい悠羅兄ちゃんになら、こういう事で気を遣う必要もない。
「それはお前の都合だろ。俺は知らん」
兄ちゃんは腕を組んで瓢々と言ってのけた。
鬼がいる。ここに鬼がいる。
兄ちゃんのその言葉が、俺の痛い心に突き刺さって悲しみに拍車をかけた。
「…………」
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