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書いている物に対してはあまり興味は湧かなかったが、そこまで一つの事に集中している事を思誓は不思議に感じた。
見た限り周囲とは仲がよさそうで、いつも子供っぽく笑っていてどちらかと言えば軟派で不真面目な男に見える。友人の姿を見れば顔を綻ばせてひょいひょいと寄っていく。誰かと付き合う事を心から楽しんでいるよう。
そんな彼が周囲をちらと見る事もなく熱心に何かに没頭している姿に、思誓は好奇心を覚えた。あるいは、苦手な相手だから余計に気になったのかもしれない。
自分から遠いところにあるもの、自分とは別の何か、自分が知らない情報に、人間は興味を覚えるものだ。本能的に自分にないものを求める。
実際、遺伝子情報が遠ければ遠いほど互いに惹き付け合うという結果もある。「お父さんの匂い」を臭いと感じるのも、自分の遺伝子情報とその匂いの遺伝子情報が類似しているからだ。
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