マキ

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アッサム、ダージリン、アールグレイ。紅茶といえども種類は様々で、俺は日によって飲むものがコロコロかわる。 しかしだいたいアッサムをチョイスしているので今日も例にならってアッサムだ。 「あいつは、雑巾をしぼった汁入りのアッサムでも飲ましてやろうか」 などと言いつつそんなことはせずにアッサムをちゃんと淹れる俺の手。 怒りは確かにあるのだが、別に踏み切るまで怒りがあるわけじゃない。 「出来たぞー」 二つの紅茶をそれ用の皿にそれぞれ乗せ、あいつのいるリビングにいった。 「遅かったわね」 あいつは、ちゃんと正座で座って、先ほどとまったく変わらない様子で待っていた。 口の悪さから、我慢の出来ないタイプと思っていたが、そうではないらしい。 カチャ、とあんまり音をならさずに慣れた手つきでガラステーブルに紅茶を置く。 「インスタントで良かったんだけど、まさかちゃんと葉を?」 「あいにくインスタントはない」 そう言って、大げさにボフッ、とソファーに座った。
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